惜春

 

惜春 椎木翻訳版

 

味のないフライを砕いたまま

薄い茶を交わしていた

夏日報道に金魚は浮いていた

周りはセックスやドラッグたちとよく遊んでいた

大人になったような気がしていた

( 晴れた日 気だるい部屋着まま 定食屋で 鯵フライを崩している 店内の角のテレビにニュースが流れて自分だけが少し置いていかれているような気持ちになる 外に出ると友達から今晩の誘いの連絡が入っていて 野球でも 駄菓子でもない チャラい遊びの誘いに いつのまにか大人になったんだな と昔と変わらない空を眺めている )

 

僕らは笑ったって 写真に残したって

いつかはどこかへ忘れてしまうんだ

( どんなに色濃い思い出も とても儚く すぐに遠くに行ってしまう )

 

虫の様に坂に溜まっていた

肺に愛を濾していた

週末になるとみんな踊っていた

彼女は既読と約束を一々欲しがった

駅でするキスの味を覚えていた

( 夜の街 虫が明かりに集まるように 若者が坂道にたむろしている iQOSで愛を濾す みんな我を忘れて踊っているけど それをみて冷静になってしまう 不満気なあの子を機嫌を取るため 駅でキスをする そんな二人を誰も気にしていないから 僕も気にならない )

 

僕らはいつだって 自らを愛して

本当はほとんどもうどうでもよかったんだ

( 本当はみんな自分の為だけに生きている )

 

僕はついにもうやめてしまったんだ

本当にもう面倒くさくなった

YouTubeかなんか流したまんま

目を瞑っていた

そしてそのまま眠ってしまっていた

( 明かりをつけずに日が落ちた部屋 散らかった部屋 その真ん中 ソファで一人空っぽになっている 動画サイトのお笑い芸人がおちょけるのを ただボーッと眺めていると いつのまにか眠ってしまった )

 

白い布を羽織っていた 不思議な感じだった

周りに続いて沖へ歩いていた

急に爆音で木琴が鳴って呼吸を失った

ソファで目覚めた

ふとみると君から着信だった

( 三途の川のような海にいた みんな死装束で沖に向かって歩いている 不思議と怖くなかった 僕もそれにつられて歩いていると 大きな音で木琴の音が鳴って 意識を失った 夢だったのかとソファで目覚めると iPhoneの木琴の着信音が鳴っていて 画面に表示された名前にどこかホッとしていた )

 

僕らはいつだって 勘違いばっかで

幸せはいつだってそのおかげだったんだ

( 勘違いが幸せを作っている気がした )

 

追い風を追い抜いてゆくように

思い通り遠い方に行こう

あの雲切り裂く大胆なイメージで

思い出しても辛くないように

荷物が重たくないように

僕らはいつも わざと置いていて

忘れてしまうんだ

( 空を飛んで どこまでも行ける 空を飛ぶために 重たいものを捨てていく いつでも 好きな時に 好きな場所に 行けばいい 目指せばいい )

 

だから忘れる為に先を急ぐんだ

( これからも人生は続いていく )

 

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